花粉症について
花粉症は、植物の花粉がアレルゲンとなり、目のかゆみ、充血、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を引き起こすアレルギー疾患です。
重症の場合は頭痛、皮膚のかゆみ、のどの不快感などが出現することもあります。
日本アレルギー学会が1万人規模に行った疫学調査では、全国平均で約16%、南関東で約24%の有病率であったと報告されております。
原因となる花粉の種類
花粉症を引き起こす原因物質は多岐にわたりますが、最も多いのはスギ花粉であり、花粉症の患者さんの約70%を占めます。
一般的には、春一番が吹く2月頃から桜の花が散る4月頃までと言われますが、地域によってばらつきがあります。
このほか、ヒノキ、イネ科植物(カモガヤ、ハルガヤ)、ブタクサ、ヨモギ、白樺などが原因となることもあります。
ヒノキ花粉の飛散時期は3月から5月、イネ科植物の花粉の飛散時期は2月中旬から12月まで、ブタクサ・ヨモギの花粉の飛散時期は8月から10月頃、シラカンバ花粉の飛散時期は4-6月(主に北海道)です。
当院のアレルギー検査(ドロップスクリーン)
当院では、指先から一滴の血液を採取することで、アレルギー症状を引き起こす原因とされるアレルゲンを30分間で判定できる機械を導入しております(※6歳以上対象とさせて頂いております)。
同検査によって分かるアレルゲンは、下記の食物関連(22項目)と生物関連など(19項目)があります。
すなわち、1回の検査で合計41種類もの原因物質を検査することできます。
食物関連
穀物類など
- 小麦
- ピーナッツ
- 牛乳
- 卵白
- オボムコイド
- ソバ
- ゴマ
- 大豆
- 米
野菜・果物
- キウイ
- バナナ
- リンゴ
- モモ
- トマト
肉類
- 牛肉
- 豚肉
- 鶏肉
魚介類
- エビ
- カニ
- サバ
- サケ
- マグロ
生物関連・そのほか
動物など
- ハウスダスト
- ヤケヒョウヒダニ
- コナヒョウヒダニ
- ネコ皮屑
- イヌ皮屑
- ガ
- ゴキブリ
植物系
- スギ
- ヒノキ
- ハンノキ
- シラカンバ
- カモガヤ
- オオアワガエリ
- ブタクサ
- ヨモギ
真菌・そのほか
- アルテルナリア
- アスペルギルス
- カンジダ
- ラテックス
薬物療法
アレルギー性鼻炎の治療は、抗原回避(別項参照)、薬物療法、手術治療、免疫治療が主なものです。
ここでは、薬物療法に関して簡単にご説明させて頂きます。
薬物療法の治療指針としては、重症度に応じた薬物を選択しており、『鼻アレルギー診療ガイドライン』に沿っております。
- 抗ヒスタミン薬
(タリオン錠、ザイザル錠、デザレックス錠、
ビラノア錠など) - ヒスタミンH1受容体に結合して、抗ヒスタミン作用を示します。抗ヒスタミン薬は第一世代と第二世代以降のものに大別されますが、中枢神経系への影響(注意力減退、認知機能低下及び傾眠)が少ない第二世代抗ヒスタミン薬が推奨されております。服薬回数、服薬のタイミング、効果発現の速度など薬剤によって特徴があるため、生活スタイルに合わせた選択が必要です。
- ロイコトリエン受容体拮抗薬
(オノンカプセル、キプレス錠、シングレア錠など) - ロイコトリエン受容体拮抗薬は主に鼻閉を抑制する作用があります。
- 抗プロスタグランジンD2、
トロンボキサンA2薬
(バイナス錠など) - 抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬は血管透過性を亢進して鼻閉を改善させます。血液をサラサラにする成分の薬を内服されている方には注意が必要です。
- ステロイド
(アラミスト点鼻液、ナゾネックス点鼻液、
エリザス点鼻粉末など) - ステロイドには抗炎症作用があり、アレルギー性鼻炎に著効します。点鼻薬による局所投与が一般的ですが、重症例では全身投与も行われることがあります。
- 血管収縮薬
- 血管収縮薬は交感神経作動薬であり、血管を収縮させ即効性に鼻閉を改善します。しかし、長期に使用すると、血管拡張が生じ、鼻閉症状が持続してしまう、いわゆる薬剤性鼻炎となってしまうので注意が必要です。
花粉症の初期治療について
症状が出現する前に、予想される飛散開始日に約1週間前から薬物療法を開始する治療法です。
第二世代抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、鼻噴霧用ステロイドのいずれかを選択して用います。
手術治療(レーザー治療)
当院では、アレルギー性鼻炎及び鼻炎に対してCO2レーザーを用いた下鼻甲介焼灼術を外来・日帰りで行っております。
CO2レーザーで焼灼することにより、鼻粘膜を変性・収縮させ、鼻つまり(約90%)、鼻水・くしゃみ(約50%)を改善させます。
スギ花粉症でレーザー治療ご希望の方は、スギ花粉が飛散する前(12月中)に治療を行うことをお勧めしています。
保険適応で治療でき、3割負担の方で約1万円程度の負担になります。
予約制になりますので、ご希望の方はお気軽にご相談ください。
免疫治療(舌下免疫療法)
免疫療法は長期の寛解を期待できるアレルギー性鼻炎に対する唯一の根治療法です。
免疫療法には、皮下免疫療法と舌下免疫療法があり、当院で行っているのは、舌下免疫療法です。
舌下免疫療法は、舌の下に少量のアレルゲンを投与し、一定の量に達するまで徐々に増やして体を慣れさせ、やがてアレルギーを引き起こさない、もしくは症状を軽減させる効果が期待できるようになります。
この舌下免疫治療法の対象となるのは、スギ花粉が原因の季節性アレルギー性鼻炎の患者さんとダニ抗原による通年性アレルギー性鼻炎の患者さんです。鼻炎の原因が不明の方は、原因次第で根治治療ができる可能性があります。
舌下免疫療法の服用について
舌下免疫療法の治療は、アレルゲンの成分を含んだ錠剤を少量から服用し始め、一定の量に達するまで徐々にアレルゲン(スギ、ダニ)の成分を増やしていきます(1日1回)。
初回に限っては院内で投与し、30分間の安静にしていただき、アレルギー症状が起きていないことを確認します。
その後、患者さんの状態を慎重に観察しながら、一定量を数年間(3年以上)にわたって服用を継続します。